下の表は温室効果ガス削減について、朝日新聞がシンクタンクに依頼して政府が公表している2020年までの中期目標の選択肢データから計算しなおしたものだそうです。
5月31日の朝日新聞の1面トップに掲載された記事です。
表-1
温室効果ガス削減・中期目標(部門別削減量) 単位:万トン-CO2
家庭 マイカー・トラック 事務所・商店
選択肢① 90年比4%増 1,400 3,000 4,500
選択肢③ 90年比7%減 1,900 4,100 4,700
選択肢⑤ 90年比15%減 5,100 8,100 8,800
これは1990年の日本の各部門別CO2排出量の削減目標のシュミレーションです。
選択肢①は全体で、1990年比4%増の場合の各部門別CO2排出量の削減目標の数値。
選択肢③は同じく7%減の場合。
選択肢⑤は同じく15%減の場合。
ということで、朝日新聞は「選択肢の条件が厳しくなる中で家庭では直線的に削減量が増えるのに、産業界の削減量は甘い。」といった主旨のようです。
コレには産業界からのプレッシャーが功をそうしているようなのです。
ところで、私はココでハタッと気付いたのですが、この表は少しおかしいのです。
選択肢①の場合は全体で4%増で、家庭からの排出は20%も増なのに1,400万トン-CO2減は変でしょ。
と言うわけで、インターネットで元ネタを探しました。
表-2
温室効果ガス排出量 ( )は1990年との比率 単位:百万トン-CO2
産業 業務他 家庭 運輸 エネ転換
1990年 481 164 127 217 68
選択肢① 90年比4%増 438(91%) 228(139%) 153(120%) 221(102%) 79(116%)
選択肢③ 90年比7%減 411(85%) 187(114%) 130(102%) 201(93%) 65(96%)
選択肢⑤ 90年比15%減 401(83%) 152(93%) 105(83%) 192(88%) 52(76%)
選択肢⑥ 90年比25%減 372(77%) 123(75%) 67(53%) 169(78%) 43(63%)
表-1も表-2も、何を表現しているのかわかりにくいと思いますが、表-1は1990年よりどれだけ減らすかという削減目標数値です。表-2はそれぞれの場合の排出する量です。
単位も違うし、括ってある部門も違いがありますが、大雑把に言うと産業、運輸の部門に比べて家庭の部門の削減率が厳しい、逆に言えば、産業、運輸に甘いということは同じです。
日本政府のこの発表に、世界の反応は非常に厳しいものです。
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)では、産業革命前からの気温上昇を2度以内に収めるには、先進諸国全体で90年比25~40%削減が必要だと予測していますし、EUでも20~30%削減を目標に揚げています。
ところがオバマ大統領は05年比14%減目標を打ち出して、日本はコレに同調しています。
90年より排出量の増えた05年比14%減は日本の場合90年比では7%減にすぎません。
見た目の数字の感じよさより、必要な削減を目標にするべきだと思うのですが、なんと日本政府は腰弱なのでしょう。
経団連や日本鉄鋼連盟などの経済・業界団体は5月21日の朝日新聞に、政府発表の「温室効果ガス削減・中期目標」について削減幅が小さな選択肢が望ましいという意見広告を出しました。
しかし、その後、個別の業界団体や個別の会社が、それぞれ、より厳しい削減目標を独自で発表し始めてきました。
機構温暖化防止に背を向けた経営姿勢では、日本国内に受け入れられないし、世界の競争にも負けてしまうという危機感の表れでは無いでしょうか。
自動車業界はハイブリッド、水素燃料、電気自動車といった方向にシフトしています。
住宅建設業界も「温暖化対策、省エネ」はもはやトレンドでなく常識となってきています。
環境経営に携わる代表者のコメントの「地球や社会を「次世代」につなぐことが、世界のビジネスでもキーワードになりつつある。産業革命に匹敵する革命期。対応しないと生き残れない」はまさに今の世界の流れだと思います。
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